過去ブログ

カウンセリング

「私がお母さんを守る!」という困難

家庭で暴力を振るう父親から母親を守ろうと、孤独な戦いを続ける子どもたちがいます。

ここで言う暴力には、肉体的な暴力だけではなく、言葉や態度によって人の心を傷つけたり支配する精神的な暴力も含みます。これをモラルハラスメント(モラハラ)と言います。

モラハラは肉体的な暴力と同様に、振るう対象となる伴侶に対してだけでなく、それを身近に見ている子どもの心も深く傷つけています。

子どもは自分自身の心も母親と同様に傷ついているにも関わらず、自覚なしに母を守り続けようとします。人は自分の痛みには鈍感です。

そんな子どもが、就職しても実家にとどまり続け、結婚も諦め、ひたすら母の防波堤であり続けようと、我が身を捧げ続けていることがあります。

わたしがことさら心を痛めるのは、こういった防波堤チルドレンが、母親だけでなく、父親のことも愛していることが多いということです。

防波堤チルドレンは、心のどこかで両親が仲良くなることを願っています。

それゆえ逃げ出さず、身を砕くような痛みに耐えながらも、じっとそこにとどまり続けるのです。

モラハラを含めた家庭内暴力は、家庭内だけで解決することが、非常に困難だと思います。

それは、被害者側が傷ついているにも関わらず、家庭の維持のため等の理由で、暴力を甘んじて受け入れてしまっている構造があるからです。

母親は往々にして傷ついているのは自分だけで、暴力を直接受けない子どもらは平気だと思っていることがあります。「私さえ我慢すればいい」と。

しかし、たとえ父親が子どもには優しく、子どもが父親になついていたとしても、母親が父親に殴られたり、怒鳴られたり、命令されたり、バカにされたり、無視され続けている姿を見て、健康でいられる子どもがいるでしょうか。

子どもも全く同様に傷ついています。

勇気を振り絞って「ママ、離婚したら?」と子どもが言ってきたら、間違っても「あなたのために離婚はしないのよ」とは言わないで下さい。

母が父にすっかり冷めていても、子どもは両親共に愛している。しかも母親同様傷ついている。

そんな状態でも母の苦しみを見るに見かねて葛藤しつつ、絞り出すように離婚を提案しているのに、「あんたのために離婚はできない」と言ってしまうと、母の苦しみを子どものせいにしてしまうことになります。

これは残酷です。子どもは「私のせいで・・・」と自分を責め、自己肯定感は著しく減退します。

では、どうしたら良いのか?

是非、家庭の外に助けを求めて下さい。

DVは恥でも何でもありません。警察に寄せられた配偶者からの暴力相談だけを見ても、平成30年には9042件もありました。

気軽に相談できる所として、たとえば全国には約300ヶ所に配偶者暴力相談支援センターがあります。各自治体には、無料のDV電話相談などもあります。

一ケ所どこかに相談して、ご自分にとって役に立たないなと感じることがあってもがっかりせず、公の機関を含めて複数の場所に相談してみてください。

わたしもDV全般のご相談に応じ、問題の解決と心のケアをカウンセリングを通じて支援しています。

さて、今回はDVの加害者を父親、被害者を母親と子どもという視点で書きました。しかし、加害者が母親ということもあります。

夫婦が双方で傷つけあい、お互いに相手が加害者で自分は被害者であると感じていることもあります。

また、DVの加害者であるかたから、崩壊した家族の修復についてご相談を頂くこともあります。

DVの加害者は、往々にして子どもの頃に自分自身も被害者としてDVを体験し、傷ついたままのことが多いです。

DVの問題は、夫婦のどちらを加害者または被害者と特定することだけにとらわれても解決しません。夫婦そして子ども、祖父母など、同居の皆が何らかの形で傷ついていたり病んでいるという視点を持つことが必要です。そして家族の中で解決できないなら、思い切って外にSOSを出すことが大事です。

心理カウンセラー 平史樹

ページトップへ