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虚しさの無限ループ脱出法
80に近い彼女は、今でも週に4日ほど、短時間勤務ながら働いています。
彼女は、街ですれ違う知らない人の囁きや表情が気になってしまい、悪意を感じて不安になり、その不安を減らすために、医師から薬の処方を受けていました。
薬を飲んでも不安はなくならず、彼女は医師のすすめでカウンセリングを受けてみることになりました。
不安体験を何度か話しているうち、彼女はある法則に気づきました。
彼女は同居している息子のことが心配になると、そのあと街で不安体験をしていたのです。
そこに気付けて以来、不安体験は減りました。
そして、息子の心配についてカウンセリングで話して心を整理すると、次に彼女は、自分の人生について考えるようになりました。
過去の思い出を回想し始めたのではありません。
これから先、どうしたいのか、どう生きたいのかを考え始めたのです。
「あ、今彼女は、自分の人生に戻って来た」
いきいきとし出した彼女の表情や笑顔を見て、わたしはそんな感触を得ました。
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自分は、本当は何をしたいのか、心の底では知りたい。
でも、それを知ろうと試みるのはあえて避けて、日常の暮らしの繰り返しの中に、自分を埋没させて行く。
義務や役割、取り組まざるを得ない困難や問題の中に埋もれさせて行く。
ゲームや社交のひまつぶしで時間を浪費し、深く考えることを先伸ばしにする。
忙しく日々が過ぎて行く。
でも、なんか虚しい。
そんな自分に気付いたことは、ありませんか?
人は、どんな境遇にあっても、また、いくつになっても、人生の意味を求める存在だと思います。
悔いの無い人生を送りたい。
誰もが宝探しをします。
でも、なかなか見つからない。
そのうち宝探しを忘れてしまう。
自分にとっての人生の意味を探す宝探しをやめている人が、同じことを無限ループのように繰り返して、ため息をついているのを見かけます。
わたしは、何か特別なことが、人生にとって意味のあることだとは思いません。
ただ、日々の繰り返しの中で虚しさを感じるようになったら、いつかやろうと先伸ばしにすることなく、今、宝探しを始めてみませんか?
仕事や家事、子育て、学校生活、闘病生活、介護生活、ひきこもり・・・。
抜け出せないように感じている生活を続けながらも、同時進行でちょっと立ち止まり、自分の人生の意味について思い、考え、探して行くことはできます。
すぐに答えは見つからないかも知れない。
でも、自分にとっての人生の意味や意義を探している人は、年齢や性別、置かれた環境に関わりなく、いきいきとしているように見えます。
そして、それを探し始めることに、「もう遅い」ということはありません。
わたしはカウンセリングの中で、よく「人生脚本」の検討、書き直しといったことを取り入れています。
人は皆それぞれに、自分の人生のあらましを脚本にして自分の中に持っているようです。
無意識にある人生の計画表のような感じです。
寿命さえ、自分自身が知っています。
それを一枚の紙に書き出し、読んでみることで、客観的に自分の人生観や信念を確かめることが出来ます。
「人生脚本」に取り組んでみると、自分の人生の意味や意義が見えてきます。
自分は何のために生まれ、何のために生きているのか?人生の目的がはっきりして来ます。
現代の資本主義社会では、富を生む生産活動に過剰に価値を見出している人が多くいます。賃金を稼ぐことに、最大の意義があるとするようなものの見方です。
そうしたら、年齢を重ねたり、病気をしたり、わけがあって働けないと、人生の価値が下がるような錯覚を覚えてしまうでしょう。
しかし、そんなことはありませんよね?
いくら稼げるかという枠を超えた、自分の人生の価値に気づけるのが「人生脚本」なのです。
虚しさから抜け出る知恵は、自分の人生に意味を見出すこと。
意味を見つけられない時の、ひとつの工夫が「人生脚本」です。
わたしはカウンセラーになってから、自分自身の「人生脚本」にも取り組んでみました。
考えて答えを導くというより、正直な気持ちを思いつくままに書いて、あとからそれを読み返すと、自ずと自分の人生が見えて来る感覚に驚きました。
何度か自分の「人生脚本」を検討し直すことで、脚本は主体的に書き換えられるのだということも学びました。
運命は、変更可能なのです。
心理カウンセラー 平史樹