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思いやり情動調律
わたしが、できる限り良いカウンセリングをさせて頂きたいと思う時、意識するのは、なるべく己を捨てて聞くということです。
本当に自分を捨ててしまう訳ではありません。わたしにも個性があります。
自分の考えは、一旦横に置いて聞く、という感じです。
カウンセラーの普段の自分の考え方や感じ方スイッチはオフにして、思いやりだけ持って自分を空っぽの状態にします。理屈で考えない、心と体で受け止めようとする。
空っぽだと、相談者さんの怒りや憎しみ、悲しみや嘆き、様々な思いが、一層鮮明に感じられるようになります。胃に緊張を感じてキリキリしたり、頭痛がしたりもします。
そうやって相談者さんの気持ちや体調を全身で感じ取っていると、時折、相談者さんの印象と言葉の間に、何か違和感を感じることがあります。
そんな時わたしは相談者さんに、
「それは、本当ですか?」
と尋ねたりします。
「上司は私を嫌っています」
(おや?なんかしっくり来ないなあ)「それは、本当ですか?」
「私になんて結婚は無理です」
(あれれ?なんだか飛躍し過ぎじゃない?)「それって、本当にそうでしょうか?」
「悪いのは全て僕なんです」
(どうしてそうなっちゃうの?)「それって本当?」
知的に判断して、矛盾を指摘するわけではありません。それではかえって相談者さんに寂しい思いをさせてしまうかも知れない。
カウンセラーは知性でなく全身で受け止める。・・・モヤモヤしたら立ち止まって、感じたことを素直に伝え、相談者さんと一緒に振り返る、掘り下げて考えてみる、という感じです。
カウンセリングの技術に、受容と共感というものがありますが、それを突き詰めて行ったら、こんなやりかたになりました。
カウンセラーが、心と体を相談者さんにチューニングする感覚。そこに思いやり、優しさ、幸せを願う気持ちを忘れないこと。
思いやり情動調律、心と体のチューニング。
相談者さんから怒りや悲しみの波が押し寄せて来ても、カウンセラーが心の温かさを保っていると、自分を見失わずに相談者さんを支え続けることが出来るように思います。
そうして行くことで、相談者さんが自分と向き合うこと、自分を知ること、自分を成長させて行くことを助けます。
心理カウンセラー 平史樹