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カウンセリング

怒りのコントロール成功例「優しさリマインダー」

家庭内暴力で悩む青年から、切実な相談を受けたことがあります。

暴力を振るうのは本人で、振るう相手は実の母親でした。

彼は普段、何もなければあえて暴力など振るわない温厚な性格です。

しかし、母親が彼を無視したり軽んじたと彼が解釈するようなことがあると、ちょっとしたことで即座にスイッチが入って手がつけられないくらいに激昂し、ひどい時には暴れて物を投げたり壊したり、母親を叩いたり蹴ったりしてしまうのです。

そして彼は、いつも決まって強烈な自己嫌悪に陥っていました。

「このままでは、殺してしまうかも知れない・・・」

彼は狼男のように、自分が獣となってコントロールできなくなることをいつも嫌悪し、恐れていました。

何年も悩み、色々と試行錯誤した結果、彼は母親に対して憎しみだけでなく、優しさも持っていることに気づきました。

母親は、大事にしていたペンダントを、大分昔にうっかり失くしてしまったことを残念がっていました。

たまたまそれを知った彼は、何年もの間気にかけていました。

ある日彼は、思い立ちました。普段しないことをして、人生を変えたいと思いました。

ついに思い切って、失くしたままだった、母親の好きなとある宝石のペンダントを探し出して買い、リボンを結んでプレゼントしました。

せっかく気に入って買った服でも、クローゼットにしまい込んだままにする癖のある母のことを思い、彼は「これはよそ行き用じゃなく、普段使いにして」という言葉を添えました。

苦労して来た母親に、人生をもっと楽しんでもらいたいという気持ちから出た言葉でした。

おしゃれを忘れていた母は、息子のアイデアを気に入り、ペンダントをして生活をするようになりました。

首にはいつも、プレゼントしたペンダントのネックレスのチェーンが、少しだけ見えました。

彼の暴力は、その日からなくなりました。

カッとなることは相変わらずあるのです。

でも、その度にペンダントを見ると、自分の中にある優しさを思い出したのです。

自分の優しさが、自分の怒りを溶かしたと感じたそうです。

ペンダントが、優しさを思い出すためのリマインダーになってくれたのです。

暴力を振るう人にこそ、優しさが必要だとよく感じます。

人から与えられる優しさ以上に、自分の中にある優しさに気づけたら、それが自分の感情をコントロールする救いになると思いました。

彼自身も救われました。

心理カウンセラー 平史樹

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