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お父さんやお母さんのお世話、どなたがしてますか?
「人の世話になるなんて、まっぴら!」と考えているお父さん、お母さん。
「人には親のことは任せられない」と医療や福祉など、外部の支援を拒絶する息子さん、娘さん。
このような組み合わせ、結構、いらっしゃるのではと思います。
「人の世話にはなりたくない」親と「親は自分が面倒を見るしかない」と信じる子どもの関係は、親子がお互いに若いうちは機能するものの、いつか必ず再検討すべき日が来ます。
「ああ、もう、面倒見切れない」と感じることは、全く恥ではありません。親も子も、年を取れば気力も体力も当然低下します。心と体の衰えと共に、食事や入浴、着替えや排泄など、それまで当然出来ていたことがだんだん出来なくなって行くのは自然なことです。
親が徐々に身の周りのことが出来なくなる。それを子どもが手伝う。ひとつ、またひとつとお世話の内容が増えて行く。
お話を聞けば、福祉施設であるかのように、朝から晩までお子さんがほとんどつきっきりで親御さんのお世話をされていることもあります。娘さんばかりではありません、息子さんでも、仕事を辞めてまでお世話をしていることは珍しくありません。
日本には、子どもが自分の生活を捨ててまで親の面倒を見るという文化があるように思います。
血がつながらなくても、お嫁さんやお婿さんが義理のお父さんお母さんのお世話を10年20年とし続けていることもあります。
家族の世話について、他人に相談はしない。
親戚にも、なるべく話さない。
家のことは恥として、誰にも明かさず、背負い続ける。
家族についての相談事をいただく時、親子のいざこざや、兄弟間のいざこざの悩みの奥に、親の世話の問題が隠れていることがあります。
親の世話は当然のことだから、当事者は問題とは考えない。
でも、客観的に見て、それは「お世話」の範囲を超えて、もはや専門家の援助が必要な「介護」なのでは?と問いかけたいことがあります。
ごはんはスプーンで口まで運んでやり、お風呂は付き添い体を洗い、服を着せ、トイレも毎回見守っている。同じことでも身内でやると「お世話」。他人がやると「介護」。
親の世話はなるべく人任せにしたくない。その気持ちはよくわかります。
でも、もし、お世話し続けることで、仕事や家庭を維持できないほど疲れてしまっていたら、後で後悔が残るほど何かを犠牲にしていると感じたら、・・・思い切って市町村の役場に電話してみてはいかがでしょうか?
「高齢の親の世話のことで相談があって電話したのですが・・・」
ちょっと事情を話すと、担当の係の人につないでくれます。
電話で話すことで、何に一番困っているのか、自然と整理されて行きます。
中には、「寝たきり」にならないと公的な支援や介護は受けられないと思っているかたもおられるかも知れませんが、「寝たきり」は介護では最も重いランクです。
入浴だけはひとりでは不安、トイレが難しくなった、服が着られなくなった、このような生活の一部に支障があるだけでも外部からの支援や介護は受けられます。福祉関係の窓口に相談する資格は充分にあるのです。
親の世話よりも、子どもの休養や治療が先決の時だとわかることだってあります。
ご家族の中で何か悩みごとがある時、家の中では当たり前のこととしている高齢者のお世話のことについて、改めて考え直すきっかけにしてみませんか?
たとえば、面倒を見ていたお父さんを週に一回デイサービスに日中預けるだけでも、同居の娘さんがほっと一息つけるようになり、生活に精神的な余裕が生まれて、他に悩んでいたことが解決することもあります。
心理カウンセラー 平史樹