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相談例

「離婚したいのですが、子供のことを思うと出来ません」

Q「三人兄弟の末っ子が障害を持っていたのですが、夫は子育てを私に任せきりで、私が困っていても助けてくれませんでした。

今ではその子はもう小学校の高学年で、友達もおり、時々クラスの子とケンカしては担任の先生にしかられますが、普通のクラスにいてほぼ問題なく学校に通っています。

でも、小さい頃の子育ては本当に大変で、なかなか言葉も話そうとせず、ものすごいおこりんぼうの上、食べ物の好き嫌いも激しく、物覚えがとても悪くて、平仮名を教えた時にも次の日には全く忘れており、同じことを何度も何度も教え直すことがいくつもありました。

そんな末の子供のことを話しても、夫は特に心配する様子もなく、むしろ困惑するような様子で、日中の子育ての大変さをわかってもらえず、何も助けてくれないことで、私はとても孤独でした。

そのうち夫のことを夫とは思えなくなり、男としても人間としても見ることができなくなり、今では完全に無視しています。もう10年近くそんな状態です。

家事は結婚当初から私が全部していて、掃除も洗濯物も食事の支度もしています。初めは夫も自分から手伝ってくれていたのですが、服の畳み方などが雑で私がいつも全部直さなければならず、かえってイライラするのでやめてもらいました。

夫がたまに話しかけてきても、すごくイライラしてしまい、いつもその場を逃げるように立ち去っています。寝室も別で、ただの同居人同士になっています。

離婚を考えるようになってからもう何年も経ちますが、夫には言えずにいます。

夫は私のイライラの原因が夫にあるということに気がついていないようだし、私もちゃんと説明したことがありません。説明したところで何も変わるわけがないと思っています。ただ、この状況では夫も相当きついと思います。子供達も、物心ついてから両親がこんな調子ですから、良い影響を与えているとは思えません。

でも、私は子供を失いたくないし、子供たちがこれから大学などに進学することを考えても、夫の収入が頼りです。私もフルタイムで働いていますが、教育費の余裕はありません。

子供たちは皆、夫のことが好きでよくなついているので、それを引きはがすのも気がとがめます。

このままでは気が滅入るし、もっと人生を楽しみたいと思い、この2年くらいは地元のカルチャーセンターで習い事をしたり、友達とまめに飲みに行くようにもしています。

でも、もう自分にごまかしが利かなくなって来ました。夫に対するイライラが減るどころか増えているのです。私がいるときに夫が家にいると、私のイライラピリピリで家中が張り詰めた状態になり、子供達も皆ギクシャクしています。

何だか私が原因で家庭が暗くなっているみたいで落ち込みます。

一刻も早く夫と別れたい、でも、子供のためには家庭を壊したくない。どうして良いのか本当にわかりません。」

A「ご相談を見ると、あなたが夫と離婚したい原因は、夫が子育てに非協力的で、あなたが困っていても助けてくれなかったからということのようですが、わたしが気になったのは、あなたが何度も『イライラ』すると訴えていることです。

あなたは『イライラ』の原因は夫にあると考えておられるようですね。

確かに障害を持ったお子さんの子育てが一番大変な時に助けてもらえなかったという思いはあるのでしょう。それは本当につらかったと思います。ただそれ以上に、そのことが原因で夫を夫としても男としても人としても見られなくなってしまい、完全に無視するようになったところに、あなたの苦しみがあると思います。

結婚当初、夫が家事を手伝ってくれた時、夫の洗濯ものの畳み方が『雑』で、あなたがいつも全部直していたということでしたね。その時も『イライラ』したということでした。

もしかすると、あなたには人が自分のやり方に合わないと許せないような、完璧主義的なところはないでしょうか。そこで『イライラ』してしまうということは、『このようにしてほしい』ということを相手にははっきりと伝えられない優しさもあるのでしょう。

職場ではどうでしょうか。『このようにしてほしい』ということがあったら、具体的に伝えられていますか?あるいは、職場でも家庭と同じように『イライラ』することはありませんか?

職場ではきちんと自分の要望を伝えられたり、『イライラ』することも少なければ、あなたは夫に対して、他の人にはない特別な感情、例えば特別に大きな期待などを抱いていたり、特別な人間関係を作りたいのかも知れません。

あなたは驚くかもしれませんが、この機会に立ち止まってちょっと考えてみてください

『イライラ』は不快な感情ですが、その奥にはどんな思いが隠れているでしょうか?

『イライラ』の不快感以上に、イライラすることであなたが得られている利益はありませんか?

例えば『イライラ』は自分が被害者である主張であり、それを態度で表すことによって家庭内での主導権を握るという例があります。

『私はあなたに苦労させられたりがっかりさせられた被害者です。だから私はイライラを態度に出しても許されるし、イライラを態度に出すことで家族を緊張させ、家庭では私が思うように振る舞わせていただきます』そんなパターンは夫婦にも子どもにも見られることがあります。

たとえば、こんな例があります。職場でもご近所でも『優しい』と評判の旦那さんが、一歩家庭に入ると豹変し、常に奥さんを怒鳴りつけ、ケンカ腰の態度で奴隷のように扱うのです。

この例でもポイントは旦那さんの『イライラ』でした。奥さんを見ると『イライラ』するというのです。旦那さんの主張では、奥さんは『なまけもの』であり、『イライラ』する。『なまけもの』を養ってやっている自分は被害者だ。『イライラ』するのは当然で、家内を怒鳴る権利が俺にはある。そういう理屈でした。しかし、この奥さんは家事に手抜きをすることはなく、いたって常識的で性格も優しく聡明なかたでした。奥さんが旦那さんについて、『何をやっても非難されるし、言われたとおりにやっても文句を言われる』と言っていたのが印象的でした。

この例で挙げた旦那さんは、家庭内では100%自分の思い通りにしたい願望が強いかたでした。本当は職場でもどこでもそうしたいが難しいので『外では気をつかう』、その分の反動で家庭では専制君主でいたい。その体制を維持するために奥さんは利用されていました。

ただ、旦那さんだけを悪者にできません。旦那さんは根はとても優しいかたでした。ただ、自分が育った家庭も亭主関白で、いつも父親が母親を怒鳴りつけていたのです。それを幼い時から見ていれば、夫婦とはこのように振る舞うものだというメッセージが、強く無意識にまで刻み込まれていることでしょう。

あなたの相談で気になったのは、あなたがもう『10年近く』夫を無視し続けていることです。それが子どもにとっても良くないことは、あなたも気づいておられるということでしたね。

それでも、別れないというところにあなたの個別性があると思いますが、ひとまずは例でも挙げたように、『不愉快であり、子どもにとっても良くないと分かりつつ、イライラし、夫を無視してしまうことによって得られているメリットは無いか』検討してみてください。

もしかすると、あなたはイライラすることによって、家事や子育てなどの家庭の運営について口出しをされることなく、思うようにできているのかも知れません。それがあなたにとっては大事なことなのかもしれません。

メリットを挙げられたら、デメリットについても考え、ご自身が何か変えよう、変わろうということに気付かれれば、それをチャレンジする価値はあると思います。

加えて、『イライラ』について、それが心理的な理由に基づくだけでなく、身体的な理由によるということも充分考えられます。

フルタイムで働き、なおかつ家事を全てこなし三人の子育てをするには、相当の体力が必要だと思います。

慢性的に睡眠不足になって、疲労が蓄積されていたり、身体機能が衰えていないか、健康診断を含めご自身で身体面の健康についても振り返ってみることが大切だと思います。

心理カウンセラー 平史樹

 

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