過去ブログ
「ゆるせない」気持ち
ゆるせない。
人を憎む、恨む、怒りを抱く、そんな感情は、世の中にあふれていて、穏やかで優しく、笑顔を絶やさない人が、常に憎しみの炎を胸に燃やし続けて生きていることだってあります。
喜怒哀楽に、本来善悪はないと思います。どんな感情も、生きるために必要です。
「怒り」も、困難な問題を解決したり、人を必要な行動に駆り立てるために必要な働きをします。
ただ、怒り続ける場合、それが憎しみや恨みに成長し、それを抱き続ける人自身を長く苦しめることがあります。
怒るには理由がある、憎んだり恨むにも必ず理由があります。その感情がいけない訳じゃない。
ただ、もしもそれが自分自身を苦しめ続けていたら、気を付けなければいけません。それは、自分自身で解決できなくなっている証拠です。自分自身が再生産し続ける感情で、自分自身を不幸にしている状態です。
取り返しのつかない経験、例えば家族を亡くされるようなことがあって、それについて誰かを憎んだり恨むような場合、「憎む以外ない」「恨むしかない」と思うこともあります。
ただ、それが唯一の選択肢ではありません。
わたしは安易に、「人を憎んではいけませんよ」「人を恨んではいけませんよ」とは言いません。
カウンセリングで憎しみや恨みの感情が出たら、咎めません。説教なんてしません。歓迎します。
どうやったらその憎しみや恨みが晴れるか、徹底的に一緒に考え、アイデアを出し合い、ノートに書き出し、何をどのようにどうするか、綿密に検討します。これはよくやります。時にまじめに、時にユーモアとして楽しみ笑いながら、一緒に復讐を空想します。
この検討は中途半端には終わらせません、遠慮しているようなら、時には「それで、あなたの恨みが本当に晴れるんですか?」と聞いて、心ゆくまでプランを立てることもあります。ドラマの脚本を考えるように具体的にプランを立てる中で、想像復讐を思いきりします。
強く抑圧していた感情が解放されると、必ず変化が訪れます。
憎しみも恨みも、恥ずかしいことではない。それをタブーとせず、可能な限り出しきってもらい、わたしも否定したり分析したりせずに受けとめきって行くようにしています。
復讐プランを立てることはしないけれど、そのかたが恨み続けていることを、何年にもわたって何度も何度も聞き続けることもあります。それだって咎めません。
怒り続け、憎み続け、恨み続ければ、不幸になる。現に今、ハッピーじゃない。なんか良くないのは感じてる。でも、思いきり話せる場所がない。話して良いこととも思ってない。だから苦しい。何とかしたい。そんな気持ちに応えています。
わたしの経験では、怒りや憎しみ恨みを抱き続けている人も、自分の幸せを放棄している訳じゃない。自分の幸せを心の底から諦めている訳じゃない。本能は誰だって幸せを求めている。
誰かに対する怒り憎しみ恨みを晴らすよりも、優先したいこと、優先したい人生、優先したい態度や生き方を、本当は、見つけたい。
その事に気づけると、人は、誰かに対して怒り憎しみ恨みを燃やすことに使っていたエネルギーを、自分の幸せのために使うことができるようになって行く。
すぐに怒り憎しみ恨みが全部消えなくても、自分のために生きる時間が増えて行く。
ただ、時折とても根深く根強い怒り憎しみ恨みがあって、どんなに話しても、なかなか解消しない時があります。
そんな人は、もしかしたら、自分自身に怒り憎しみ恨みを抱き続けているかも知れない。自分自身に怒りを感じ、幸せになることを禁じてしまっているかも知れない。
ただ、もしも、自分自身に怒り憎しみ恨みを抱いていることに気づけたら、チャンスが生まれます。
自分自身を「ゆるす」チャンスです。
自分の人生の中で、幸せへと舵を切るチャンスです。
自分が恨んでいるのは、誰かじゃなくて、もしかして、自分。
怒っているのは、人に対してじゃなくて、もしかして、自分に対して。
自分のことが嫌いなのは、もしかして、自分に対する怒りが原因かも。
それを見破ると、自分をゆるすことが出来るようになる。自分のことをゆるせるようになると、不思議と人のこともゆるせるようになる。
見破るって、理解することです。「あ、そうか、わかった!」ってなることです。それだけでも人って変われます。理解が、人を成長させるんです。
自分が幸せになることを、ゆるしてください。
心理カウンセラー 平史樹