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生きているからこそ、希望がある
この危機の時代に生まれついた子どもたち、若者たちを、どうしたら励ませるか、勇気づけられるか。建前を言っても無意味。ごまかしは全く効かない。
繊細で優しく、それでいて厳しい彼らの目に、昔の理屈は通用しない。
育てる者として、優しさや温かさは不可欠だ。30年前は、それに情熱を加えて堂々と教壇に立てば、子どもたちは納得しているように思えた。勉強に打ち込めた。進学や就職に向かって行けた。少なくとも単純なわたしは、その姿勢で教育に取り組めた。
今は違う。
もっと説得力がないと、子どもたちは安心して学べない。学ぶこと、成長することがこの先の幸せにつながると、確信できない。そう感じる。
危機の時代に、今、わたしたちは生きている。
何を頼りにできるか。
特にコロナ禍以降、ずっと探していた。
今のわたしたちが頼れるリアルは何か?
子どもから大人、そして高齢者まで、胸に響く価値あるものは何か。
それは命ではないか?
今、生きているという奇跡。
どんな人も明日は確かではないこの時代。しかし、今、生きている。
その素晴らしさ!
医療機関や福祉施設で働いた経験は、わたしに死を身近なものにした。
しかし、家族との死別は特別つらかった。
ところが意外にも、気づけた。生きていることの奇跡と喜び。亡くなった人も、この世で輝くことができた素晴らしさ。
諸行無常は、はかなさ切なさの言葉ではない。
全てのものが変わりゆくからこそ、今、際立つ命の一瞬の輝きに気づかせる言葉だ。
全てのものが変わりゆくからこそ、本当に優しくなれる。強くなれる。
今、君は生きている。そこに充分な希望が秘められている。
何かできることがある。死んでからはできない。でも生きているからこそできること。
人生は、量では無い。質だ。
長生きして幸せとは限らない。今日にどれだけ真剣に自分をぶつけることができたか。
今日一日、後悔しない生き方を貫けたか。
ためらわず生きてほしい。挑戦すること、失敗すること、愛すること。
平史樹