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取り返しのつかない時
人生の中には、取り返しのつかないことがあります。
一番難しいのは、「もう、あれは取り返しのつかないことなんだ」と諦めることかも知れません。
「諦めること」は、時として取り返しのつかない経験以上につらいことなのではないかと思います。
家族や友人、恋人との別れ、事故や怪我、大きな病気、お金の失敗、仕事の失敗、人間関係の失敗、人を傷つけてしまったこと、自分を傷つけてしまったことなど・・・予期できなかったことや理不尽なことほど、悔いが残るものですね。
取り返しのつかない経験から、何年、何十年と経って諦めがつく人もいれば、生涯諦められないまま亡くなっていく人もいます。
相談を受ける側としては、「もしこのかたが諦めるということができれば、 どんなにか楽だろう。つらいのは、取り返しのつかない経験ではなくて、諦めのつかない自分の心そのものかも知れない。」と感じることもあります。
しかし、諦めきれずに苦しんでいるかたには、そんな理屈はなかなか通りません。
わたし自身も、諦められずに何年も引きずり続けた苦しい経験があります。
振り返るとその頃は、固い殻に心を閉ざしたまま、目の前のことが見えずに過去の中に生きていたような気がします。
そんな時には、何とか取り返しがつく方法はないか、ひたすら考えて、納得するまでやれることはやりつくすことが必要なこともありますね。
そうして、少しずつ「諦める」準備をして行きます。
・・・思えば、今、学校でも家庭でも、「諦める」ことを教えなくなった気がします。
「諦める」という言葉には、自分を敗者と認めるような、ネガティブで惨めな響きを感じる人が多いかも知れません。
しかし「諦める」には、潔(いさぎよ)さや清々(すがすが)しさに通じるポジティブな面もあります。
「諦める」からこそ、前に進める。人生を生きられるということがあります。
「人生には、取り返しのつかないこともある」
シンプルなこの真実を、素直に受け入れてみる。
前向きな気持ちで、諦めてみる。
その瞬間、全身から力が湧いて来ます。
心理カウンセラー 平史樹